最新の農業論紹介 益永八尋 TPP合意(オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージランド、ペルー、シンガポール、ベトナムの11か国)や日欧EPAに見られるように、日本農業をめぐる環境は、自公政権による農業(家族農業)への攻撃は一段と加速されている。この攻撃の真の目的はどこにあるのか、そしてこの攻撃から農業を守る方策(農業政策)はどのようなものが考えられるのか、そして、次世代に引き継ぐ農業とはどのようなものが考えられるか。この三つの問いに関して、農業関係者だけでなく広く国民の間で議論する場合の参考資料になればとの思いをいだき、最近(2017〜2018年初)、農業研究者の寄稿文が雑誌に発表されたので紹介する。本来ならば、これらの寄稿文を読んだ、感想や意見を述べることも必要であるが、ここでは、どのような主義・主張や思想に関係なく農業をめぐる最近の寄稿文を紹介するのが主目的であるため、敢えて私見を排することとした。 紹介の寄稿文は、日本共産党出版の「前衛」(2017年12月号、2018年1月号、2018年3月号)[定価:730円]、新日本出版社「経済」(2018年2月号)[定価:1030円]である。これらの寄稿文の表題(タイトル)、大見出し、小見出しは以下のようである。表題、大見出し、小見出しは寄稿文のとおりであるが、番号は紹介者(筆者)が便宜的に付したものである。 雑誌発行所 前衛:日本共産党中央委員会 TEL:03-5379-2409 FAX:03-5379-2408 E-mail:book@jcp.or.jp 経済:株式会社 新日本出版社 TEL:03-3423-8410 FAX:03-3423-8406 E-Mail:keizai@shinnihon-net.co.jp @ 「農は国の基」−土台としての農業の強さこそ 文献:前衛 2017年12月号 シリーズ 日本の農業・農村の再生を考える 著者:小松泰信 (こまつ やすのぶ) 略歴・資格:岡山大学大学院環境生命科学研究科教授。1953年長崎市生まれ。京都大学大学院農学研究科博士後期課程研究指導認定退学。博士(農学)。長野県農協地域開発研究機構研究員、石川県農業短期大学を経て、1997年に岡山大学農学部に。 専門:農業経営学、農業協同組合論 T「農」の世界 循環を持続させる (1) 「基層領域」「表層領域」という二重構造として (2) 対極にあるグローバル企業 (3) 「着土」の意味、その実践者の意味 U 農業にいかなる強さがもとめられているのか (1) 適切な支援をあまねくおこなうのは当然 (2) 岩盤は必要不可欠である V 異常な農業協同組合攻撃のねらい (1) 「納得性」の原理が働く (2) 協同組合として地域に根ざさるを得ない W 長年の自民党農政がもたらす深刻な矛盾 (1) 「傷だらけの優等生」 (2) かつての自民党が持っていた「良さ」が消えた X 「競争力強化」の名で農業・農協の解体・切り売り (1)
四割にみたない食料自給率 (2)
農業競争力強化支援法は廃止すべき Y いま農学に求めたいこと (1) 生命の連鎖性に向き合う (2) 研究内容を大きな視点で見直す Z 農業を「基幹的生産部門」とする日本共産党への期待 (1)
政策の柱にしたい二点 (2)
「着土」できる条件があれば変化がおきる A 国際社会に広がる小規模・家族農業の評価の流れ −持続的発展への大きな可能性− 文献:前衛 2018年1月号 シリーズ 日本の農業・農村の再生を考える 著者:関根佳恵 (せきね かえ) 略歴・資格:愛知学院大学経済学研究科准教授。1980年横浜市生まれ。2011年、京都大学大学院経済学研究科修了、博士(経済学)。立教大学教授をへて、2014年、愛知学院大学経済学部専任講師、2016年から現職。 専門:農業経済学。 著書等:2012〜2013年に国連世界食料保障委員会のハイレベル・パネルに参加、報告書(邦訳『家族農業が世界の未来を拓く−食料保障のための小規模農業への投資』家族農業研究会、農林中金総合研究所共訳、農文協、2014年)の執筆、翻訳に携わる。共著に『多国籍アグリビジネスと農業・食料支配』(明石書店 2016年)など。 T 小規模・家族農業とは −持続可能な社会をつくる− (1) 家族労働力が過半を占める (2) 2007、2008年の世界的な食料危機が転機に (3) 圧倒的な効率性 (4) 農業で雇用を創出する U 世界の小規模・家族農業の状況はどうなっているのか (1) 実態の「見える化」が必要 V 日本の特徴をみる W 多面的機能、重要な役割と直面する危機−支援は喫緊の課題 (1) 企業、国家による大規模な土地収奪 (2) 政策的支援の必要性への認識の広がり X EU諸国−雇用の創出、ラベル制度などで活性化 Y 世界の潮流に逆行する日本政府 (1)
所得補償などで経営環境の整備を [ 日本が発展途上国に与えている影響 (1) 途上国の過酷な労働実態の上に \ 農業を社会的に位置づけ、大きな役割を正しく評価する (1) 地域で自給率を高める B
日本農業に求められる構造改革とは 文献:前衛 2018年3月号 シリーズ 日本の農業・農村の再生を考える 著者:村田 武 (むらた たけし) 略歴・資格:九州大学・愛媛大学名誉教授。1944年、福岡県生まれ。京都大学経済学部卒業、京都大学大学院経済学研究科博士課程中退。大阪外国語大学(ドイツ語学科)助手、講師、っ助教授を経て、1981年、金沢大学経済学部助教授、教授、1998年、九州大学農学部教授、同大学院農学研究院教授。2005年、愛媛大学農学部教授、同特命教授、同社会連携推進機構教授、同社会連携推進機構客員教授。2015年、愛媛大学アカデミックアドバイザーに。活、媛地域総合研究所代表取締役、愛媛県自然エネルギー利用推進協議会会長、NPO法人自然エネルギー愛媛理事長。 はじめに 1 先進国に共通する農業構造の変化 2 なぜ、水田農業は水稲単作化したか (1) アメリカの押しつけ−対米従属の道へ (2) 阻まれた本格的な水田複合経営 3 農業基盤の後退と農産物供給力の低下 (1) 法人化・大型化と外国人労働者への依存 (2) 水田利用率の低下・荒廃農地の増加 4 日本農業に求められる構造改革 (1) 水田農業の複合的・総合的発展 (2) 耕畜連携の地域農業への構造転換 5 「FEC自給圏」づくりと「食とエネルギーの産直」へ C
「食料・農業・農村」の再生に向けて−安倍農政の検証と対抗− 新日本出版社『経済』(2018年2月号)編集部の問題提起を受けての冬木勝仁(ふゆき かつひと)東北大学教授と村田 武(むらた たけし)九州大学名誉教授による対談。 1
農業・農村の現状をどうみるか (1) 進行する農業・農村の危機 (2) 大規模化の内実、中山間地の実情は (3) 受給のひっ迫、供給力の低下 2
安倍農政を検証する (1) 米の生産数量配分見直し、直接支払交付金の廃止 (2) TPP11、日欧EPAと日米関係 (3) 種子法廃止の影響は (4) 農協攻撃と農政の対決点 3
食料・農業・農村の再生への課題 (1) 農山村の持続、担い手づくり (2) 自給率を引き上げる (3) 農村経済の基礎を支える (4) 生産者と消費者が結んで (5) 共同の力でたちむかう |